
中小企業や個人事業主の方から、こんな悩みを聞くことがあります。
問い合わせへの対応が数時間、場合によっては翌日になってしまう。
その間にお客さんの気持ちは冷め、「もう他に頼みました」と言われてしまう。
この「初動の遅れ」による機会損失を、AIで解決できないかと考えて開発したのが「ヒアリングAI」です。
LINE公式アカウントに届いた問い合わせに、AIが自動で対応し、必要な情報を聞き出して、社長のスマホに要約を届ける。アイデアを思いついてから約1週間で、デモ公開まで持っていきました。
この記事では、なぜこのシステムを作ろうと思ったのか、どうやって作ったのか、開発中に何が大変だったのかを、実体験ベースでお話しします。
技術的な話も出てきますが、エンジニアでない方にも伝わるように書いていますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
Contents
なぜ「問い合わせの初動対応」を自動化しようと思ったのか
きっかけは、ある調査データでした。
問い合わせ後5分以内に応答した場合、30分後に応答した場合と比較して成約率が約21倍高い
出典:米国のInsideSales.com(現XANT)が提唱
この数字を見たとき、「初動のスピード」がどれほどビジネスに影響するかを実感しました。
でも現実には、中小企業の社長さんは現場に出ていたり、商談中だったり、休日や深夜にも問い合わせが来ることがあります。1人で全部回している方も少なくありません。24時間即レスなんて、人間には不可能です。
そこで思いついたのが、「初動の対応だけ」をAIに任せるというアイデアでした。
お客さんの話を聞いて、「何をしたいのか」「予算はどのくらいか」「どのくらい急いでいるか」を自然な会話で聞き出す。そして、その内容を要約して社長のスマホに届ける。
イメージとしては、ベテランの受付スタッフが最初の対応をしてくれる感覚です。
自分自身、営業職からエンジニアに転身した経験があるので、「お客さんとの最初のやり取りで、何を聞き出しておけば商談がスムーズに進むか」は分かっています。その営業経験が、AIの会話設計にそのまま活きました。
技術スタック:Dify × Make × LINE公式アカウント
使ったツールは3つだけ
このシステムは、3つのツールを組み合わせて作りました。プログラミングのコードはほとんど書いていません。いわゆる「ノーコード」に近い構成です。
① LINE公式アカウント(お客さんとの窓口)
お客さんが実際にメッセージを送る場所としてLINEを使います。
LINEは日本で最も使われているメッセージアプリなので、「このアプリを新しくインストールしてください」といったハードルがありません。お客さんにとって一番自然な連絡手段になります。
② Dify(AIの頭脳)
AIに「どんな風に会話するか」を指示するためのツールです。例えるならば、新人のスタッフに「こういう順番で質問してね」「こんな言い方で話してね」と教えるマニュアルを作る場所です。
Difyを使うと、AIの性格(丁寧に話す、フレンドリーに話す等)や、お客さんに聞くべき質問内容を、日本語の文章で設定できます。プログラミングの知識がなくてもAIの動きをコントロールできるのが特長です。
③ Make(ツール同士をつなぐ配線係)
LINEとDify、そして社長のスマホ(SlackやLINE)をつなぐ「配線」の役割をしています。
例えるならば、郵便局のような存在です。お客さんからLINEに届いたメッセージを「Dify(AI)」に届け、AIが考えた返事を「LINE」に戻し、ヒアリングが終わったら要約を「社長のスマホ」に届ける。この一連の流れを自動でやってくれます。
この構成を選んだ理由
選んだ理由は3つあります。
コストの安さ
このシステムの月額コスト(AI利用料)は、月50件の問い合わせを処理しても約10円くらいです。
AIのモデルには「gpt-4.1-mini」という、高性能かつ低コストなモデルを採用しています。
ノーコードで量産できる
最初の仕組みができれば、次回以降は設定をコピーして、業界に合わせた質問内容に変えることで横展開もできます。
どのツールも無料プランがある
開発段階ではすべて無料の範囲内で試せるので、初期投資ゼロで始められました。
1週間の開発で一番大変だったこと
「8割できた」からが本番だった
LINEにメッセージを送ったらAIが返事をしてくれる——という基本的な動きは、2〜3日で作れました。
でも、そこから先が本当に大変でした。
残りの2割を仕上げるために費やした時間は、最初の8割よりもはるかに長く、神経を使いました。具体的に何が大変だったか、いくつかお話しします。
データの受け渡しで起きるエラーとの戦い
一番苦労したのは、ツール同士でデータを受け渡すときに発生するエラーです。
例えば、AIが作成した要約文を社長のスマホに送る処理。AIが生成した文章の中に「特殊な文字」(改行や引用符など)が含まれていると、途中の処理(Make)が「このデータは読めません」とエラーを出して止まってしまいました。
人間の目で見れば普通の文章なのに、コンピュータにとっては「ルール違反の文字」が混じっているという、なかなかやっかいな問題でした。
最終的には、Makeの「データ入力方式」を切り替えることで解決しました。手動でデータの形式を整える方法から、ツールに自動で整えてもらう方法に変えました。
設定を変えたら、別の場所が壊れる
もう一つ大変だったのが、「1箇所の設定を変えたら、別の場所が動かなくなる」という連鎖的な問題がありました。
Makeでは、ツール同士をつないだときに「前のツールから受け取るデータの形式」を記憶するようになっています。ところが、前のツールの設定を変更すると、その記憶が古いまま残ってしまい、次のツールが正しくデータを受け取れなくなってしまうことが起きました。
これは実際に動かしてみないと分からない問題だったので、1つ直しては動かし、また別の場所が壊れて直す、という地道な作業の繰り返しでした。
個人開発は「完成させる」フェーズが一番キツい
この経験を通じて強く感じたのは、個人開発は「動くもの」を作るより「完成品」に仕上げる方がはるかに難しいということです。
プロトタイプを作るのは楽しいです。「おお、動いた!」というワクワク感があります。
でも、実際にお客さんに使ってもらえるレベルにするには、エラー処理、テスト、細かい調整の積み重ねが必要です。
地味ですが、ここを乗り越えないと「作ってみた」で終わってしまいます。
AIに「質問責め」させない設計のこだわり
1回の返信につき、質問は1つだけ
このシステムを設計するとき、一番こだわったのはお客さんの体験です。
よくあるチャットボットに話しかけると、一度にたくさんの質問が来ることがありますよね。
「お名前は?」「ご住所は?」「ご予算は?」「ご希望の日程は?」
まるで問診票を書かされているようで、途中でうんざりしてしまいます。
ヒアリングAIでは、1回の返信につき質問は1つだけにしています。しかも、お客さんの言葉に対して必ず「それは良いですね」「なるほど、そういうご事情なんですね」と共感の言葉を入れてから、次の質問に移ります。
質問というより、自然な会話の中で必要な情報を聞き出していくイメージです。
「今すぐ客」と「見込み客」を自動で見分ける
もう一つのこだわりは、お客さんの「本気度」に応じて対応を変える仕組みです。
問い合わせをしてくる方には、大きく分けて2つのタイプがいます。
「キッチンをリフォームしたいのですが、予算は100万円くらいで考えています」
こういう方は「今すぐ客」です。具体的な相談なので、必要な情報をしっかり聞き出して、社長に要約を届けます。
一方、「家が古くなってきたけど、何からすればいいか分からない」
こういう方は「見込み客」です。まだ漠然としているので、無理に質問を続けても逆効果です。共感した上で施工事例集をお送りし、「気になることがあればいつでも聞いてくださいね」と自然に締めくくります。
この分岐をAIが自動で判断するのが、一般的なチャットボット(全員に同じ対応をする)との大きな違いです。
AIであることを隠さない
最後にもう一つ。このシステムでは、AIが最初の返信で「AIアシスタントが代表に代わって対応します」と必ず伝えるようにしています。
AIであることを隠して人間のふりをするのは、バレたときに信頼を大きく損ないます。最初から正直に伝えた方が、お客さんも安心してやり取りできます。
お客さんの情報はAIの学習に使われません
「AIにお客さんの個人情報を渡して大丈夫なの?」と心配される方もいると思います。
このシステムでは、OpenAIの「API」という業務専用の接続方式を使っています。
一般的な「ChatGPT」(ブラウザで使う無料版)とは違い、API経由で送ったデータはAIの学習に使用されないことが、OpenAIの利用規約で明記されています。

出典:OpenAI におけるエンタープライズプライバシー
つまり、お客さんがLINEに入力した情報が、AIの学習素材になることはありません。この点は、サービスを提供する上で最も大切にしている部分です。
実際に動くデモを公開しています
ここまで読んでいただいて、「実際にどんな感じで動くのか見てみたい」と思った方もいるのではないでしょうか。
現在、工務店・リフォーム業向けのデモ環境を一般公開しています。架空の「大工の山田工務店」という設定で、実際にLINEで話しかけて、AIがどのように対応するかを体験できます。
体験のヒント
「キッチンをリフォームしたくて…」と具体的に話しかけると → 今すぐ客ルートを体験できます。AIがリフォーム箇所・予算・希望を1つずつ聞き出して、最後に要約を作成します。
「家が古くなったけど何からしていいか分からない」と話しかけると → 見込み客ルートを体験できます。AIが共感した上で事例集を案内し、無理に質問を続けません。
デモは無料で、体験後に営業連絡をすることもありません。
モニター企業を3社限定で募集しています
このシステムは工務店だけでなく、不動産仲介、士業(税理士・社労士等)、Web制作会社など、問い合わせ対応が発生するあらゆる業界でカスタマイズできます。
AIの「聞き方」「話し方」「質問項目」を業界に合わせて設計するので、お客さんにとっても違和感のないやり取りが実現できます。
現在、導入モニターとして先着3社限定で特別価格にてご提供しています。
料金プランやカスタマイズの詳細は、以下のページにまとめています。
「うちの業界でも使えるの?」「まずは話だけ聞いてみたい」という方も大歓迎です。LINEからお気軽にご相談ください。
まとめ
この記事では、LINE × AIで問い合わせ対応を自動化するシステム「ヒアリングAI」を個人開発した話をお伝えしました。
振り返ると、開発で大事だったのは技術力よりも「お客さんの体験をどう設計するか」でした。質問は1つずつ、共感を入れてから聞く、本気度に応じて対応を変える、AIであることを正直に伝える。これらは技術的には地味な工夫ですが、実際に使ってもらったときの印象を大きく左右します。
営業職からエンジニアに転身し、フリーランスを6年経験し、今は会社員として働きながら個人事業も続けている自分だからこそ、「現場の課題」と「技術でできること」の両方が見えていると感じています。
もし「うちの問い合わせ対応を何とかしたい」と感じている方がいたら、ぜひ一度デモを体験してみてください。

