- 貸付制度って本当に大丈夫だろうか?
- デメリットは何かある?
事業資金の調達方法として注目を集める小規模企業共済の貸付制度。低金利で利用できる魅力的な制度ですが、実際の活用には慎重な判断が必要です。
本記事では、特に見落としがちなデメリットや注意点に焦点を当て、経営判断に役立つ情報をお届けします。
本記事の内容
- 小規模企業共済とは
- なぜ今、貸付制度のデメリットに注目すべきか
- 知っておくべき5つのデメリット
- 賢い活用のためのチェックポイント
小規模企業共済とは
小規模企業共済は、中小企業や個人事業主の方々の「事業資金の調達」と「将来の生活保障」を支える国の制度です。毎月の掛け金を積み立てることで、必要な時に貸付を受けられる他、廃業や退職時には退職金として受け取ることができます。
小規模企業共済については、以下の記事で詳しく解説しています。
なぜ今、貸付制度のデメリットに注目すべきか
近年、多くの経営者が小規模企業共済の貸付制度に注目しています。確かに「低金利」「手続きが簡単」という特徴は魅力的です。
しかし、これらのメリットだけに目を奪われている可能性があります。
実際に以下のような課題に直面する経営者が増えています。
- 必要な資金額が積立額を上回り、追加の資金調達が必要になった
- より有利な融資制度があったにもかかわらず、既に貸付を受けていたため利用できなかった
- 事業環境の変化に対して、積立金を柔軟に活用できなかった
資金調達は、事業の将来を左右する重要な経営判断です。目先の利便性だけでなく、デメリットもしっかりと理解した上で、自社にとって最適な選択をする必要があります。
この制度を効果的に活用するためにも、まずはその限界と制約を正確に把握しましょう。それが、より賢明な経営判断への第一歩となります。
知っておくべき5つのデメリット
①資金調達の選択肢が狭まる可能性
実は、この制度を利用することで、より有利な資金調達の機会を逃す可能性があります。
例えば、政府系金融機関の創業支援融資や事業性融資といった、場合によってはより好条件の選択肢を見落としてしまうことも考えられます。
②積立額に縛られる貸付限度額
必要な資金額が積立額を上回る場合、不足分を別途調達する必要が出てきます。これにより、複数の借入を抱えることになり、資金管理が複雑化するリスクもあります。
③解約時の制限
貸付期間中は原則として解約ができません。事業環境の急激な変化に対して、積立金を活用した柔軟な対応が困難になる可能性があります。
④使途の制限
事業資金以外への利用は原則として認められません。
例えば、個人的な資金需要や、事業関連でも一部の支出には利用できない場合があります。
⑤想定以上のコスト発生
一見低金利に見える貸付も、手続き費用や時間的コストを考慮すると、必ずしも最適な選択とは限りません。
賢い活用のためのチェックポイント
最適な利用シーン
計画的な設備投資や改装時
事前に必要金額と時期が明確な設備更新や店舗改装は、小規模企業共済の貸付制度の活用に適しています。返済計画が立てやすく、事業拡大や効率化に直結する投資であれば、低金利の本制度を活用する価値は高いでしょう。
返済計画が立てやすい、短期の資金需要
季節変動による売上の谷間や、大型案件の入金までの橋渡しなど、短期的な資金需要に対して有効です。返済の見通しが立ちやすく、かつ事業の継続性を支える資金需要であれば、積極的な活用を検討できます。
他の借入れが難しい状況での資金調達
金融機関からの新規借入れが困難な状況でも、積立金の範囲内であれば比較的容易に資金調達が可能です。特に、創業間もない企業や、一時的な業績悪化により通常の融資を受けにくい場合の選択肢として検討できます。
利用を再検討すべきケース
創業資金など、大規模な資金調達が必要な場合
創業資金や大規模な事業拡大など、多額の資金が必要な場合は、積立額以上の調達ができない本制度には限界があります。このような場合は、政府系金融機関の融資や民間金融機関からの借入れなど、より規模の大きな資金調達手段を検討すべきでしょう。
事業の将来性に不安がある状況での借入
現在の業績や将来の見通しに不安がある場合、安易な借入れは状況をさらに悪化させる可能性があります。このような状況では、まず事業計画の見直しや経営改善に注力し、借入れについては慎重な判断が必要です。
より有利な資金調達手段がある場合
政府系金融機関の創業支援融資や、事業性融資の中には、本制度よりも有利な条件で借入れができるものもあります。特に、創業時や新規事業展開時には、様々な支援制度があるため、それらと比較検討することをお勧めします。
活用を決断する前の確認事項
返済能力の評価
月々の返済額が事業のキャッシュフローに与える影響を慎重に検討します。特に、既存の借入れがある場合は、総返済額が事業の健全性を損なわないか確認が必要です。
他の資金調達手段との比較
金利だけでなく、手続きにかかる時間や労力、将来の資金需要への影響なども含めて、総合的に判断します。場合によっては、複数の調達手段を組み合わせることも検討に値します。
専門家への相談
税理士や金融の専門家に相談し、事業計画や財務状況を踏まえた客観的なアドバイスを得ることをお勧めします。特に、初めて制度を利用する場合は、専門家の意見を参考にすることで、より適切な判断が可能になります。
まとめ
経営判断のための3つの基準
- 資金需要の規模と時期は適切か
- 返済計画は持続可能か
- 他の調達手段と比較して最適か
小規模企業共済の貸付制度は、適切に活用すれば強力な経営ツールとなります。
しかし、闇雲な利用は避け、自社の状況を冷静に分析した上で判断することが重要です。