
- フリーランスでも労災保険に入れるの?
- 年間いくらかかって、本当に必要なの?
- 入ったほうがいいのか判断できない
フリーランスは、会社員と違って労災が自動では付いてきません。仕事中にケガをして働けなくなっても、治療費も生活費も自己負担です。
ただ、フリーランスでも「特別加入制度」を使えば労災保険に入れます。
僕は営業から未経験でエンジニアとして独立し、2020年からフリーランスとして6年活動しました。
その中で、フリーランスの社会保障の薄さに不安を感じて、実際に労災保険へ特別加入したことがあります。給付基礎日額は14,000円、支払ったのは年間27,000円でした。
2025年から約1年加入しましたが、給付を使うことは一度もありませんでした。2026年に会社員に戻ったタイミングで脱退しています。
この記事では、制度の仕組みだけでなく、「なぜ加入しようと思ったのか」「実際いくらかかったのか」「どんな人なら入る意味があるのか」を包み隠さずお話しします。
- フリーランスも「特別加入制度」で労災保険に入れる(2024年11月から対象が大幅に拡大)
- 僕は社会保障の薄さが不安で、給付基礎日額14,000円・年27,000円で加入した
- 加入期間は2025年からの約1年で、結果として一度も使わなかった
- 会社員に戻ると労災が自動適用されるため不要になるため脱退した
- 保険料は経費ではなく「社会保険料控除」の対象になる(ここは間違えやすい)
Contents
フリーランスも労災保険に入れる|特別加入制度とは
フリーランスが原則対象外である理由
労災保険は、労働者が業務中や通勤中にケガ・病気をした際に補償を受けられる制度です。会社員なら自動的に加入していますが、フリーランスは雇用関係がないため原則として対象外です。
そのため、業務中の事故でも労災として認められず、治療費も休業中の生活費も自己負担になります。
2024年11月から、ほぼすべてのフリーランスが対象に
かつては一部の業種(一人親方など)に限られていた特別加入制度ですが、2024年11月1日に、フリーランス新法に伴う労災保険法施行規則の改正により、業種を問わず幅広いフリーランス(特定受託事業者)が対象になりました。
エンジニアやWebデザイナーも、この改正以前から対象業種に含まれていましたが、改正によって対象はさらに広がっています。
特別加入の対象になる業務
ITフリーランスの場合、おおむね次の業務が対象です。
- 情報処理システムの設計、開発、管理、監査、セキュリティ管理
- 情報処理システムに関する業務の一体的な企画
- ソフトウェアやWebページの設計、開発、管理、監査、セキュリティ管理、デザイン
- 上記に関する業務の一体的な企画その他の情報処理
具体的な職種としては、システムエンジニア・プログラマ・運用保守エンジニア・ITコンサルタント・データサイエンティスト・Webデザイナーなどが該当します。
参照:ITフリーランス支援機構全国労災保険センター_対象職種
最新の対象範囲や条件は、加入を検討している団体および厚生労働省の公式情報で必ずご確認ください。
【実体験】社会保障の薄さが不安で加入し、1年で脱退した
ここからは、僕が実際にどうだったかをお話しします。
加入した理由:フリーランスの社会保障は、想像以上に薄い
そもそも僕が特別加入を考えたきっかけは、フリーランスの社会保障の薄さに不安を覚えたことでした。
会社員のころは、労災も傷病手当金も厚生年金も、意識せずに守られていました。
ところが独立すると、そのほとんどが自分の手から離れます。国民健康保険には傷病手当金がなく、働けなくなればその日から収入が止まってしまいます。
この事実に気づいたとき、正直ゾッとしました。
「もし仕事中にケガをしたら、自分には何も残らないのでは?」
その不安が、加入を決めた一番の理由です。
加入先とかかった費用
加入したのは、ITフリーランス支援機構 全国労災保険センターです。
ITフリーランス向けに特別加入を扱っている団体で、Webから申し込めます。
- 給付基礎日額:14,000円
- 年間の支払総額:27,000円
- 加入期間:2025年〜2026年の約1年(フリーナンスから移行し、会社員になるタイミングで脱退)
給付基礎日額は自分で選べます。日額を高くすれば保険料は上がりますが、その分もらえる休業補償も増えます。僕は当時の単価から見て、働けなくなったときに生活が回る水準として14,000円を選びました。
なお、団体に支払う費用は保険料だけではありません。年会費や入会金、2年目以降の更新手数料が別途かかります。金額は団体によって異なるため、申し込み前に必ず公式サイトで確認してください。
手続きは「Web申込 → 審査 → 電話確認」
手続きの流れはシンプルでした。
- Webサイトから申し込み
- 審査
- 電話での確認のやり取りがあった(審査の過程で)
- 加入完了
意外だったのが3番目です。Webで完結すると思っていたら、確認の電話がありました。手間というほどではありませんが、「申し込んだらすぐ加入完了」ではないことは知っておくといいと思います。日中に電話を受けられるタイミングを見て申し込むとスムーズです。
給付を使うことは一度もなかった
ここも正直にお伝えします。
加入していたあいだ、一度も給付を使いませんでした。
支払った27,000円は、金銭的に見れば戻ってきていません。
ただ、これを「無駄だった」とは思っていません。加入の目的は、そもそも「社会保障の薄さへの不安を減らすこと」でした。「もし仕事中にケガをしても、治療費と休業補償がある」と分かっているだけで、不安は確実に軽くなりました。
保険は本来、使わないのが一番いいものです。その意味では、何事もなく終わったこと自体が良い結果だったと考えています。
会社員に戻って脱退した
2026年に会社員エンジニアとして働き始めたタイミングで、特別加入は脱退しました。
理由は単純で、会社員は労災保険が自動的に適用されるため、特別加入する必要がなくなるからです。
ここは意外と見落とされがちなポイントです。労災の特別加入は「フリーランスである間」の備えであって、働き方が変わればその役割は終わります。加入したら一生続けるものではありません。
なお、脱退時は労災保険料が月割で返還される団体が多い一方、年会費や入会金は返還されないのが一般的です。年度の途中で働き方が変わりそうな方は、この点も頭に入れておくとよいと思います。
労災保険で受けられる補償
特別加入で受けられる主な補償は次の通りです。
- 療養(補償)給付:業務中・通勤中のケガや病気の治療費
- 休業(補償)給付:働けない期間の補償。休業4日目から
- 障害(補償)給付:後遺障害が残った場合
- 遺族(補償)給付:死亡した場合、遺族に対して支給
休業補償の「80%」の内訳
よく「給付基礎日額の80%が支給される」と説明されますが、正確には内訳があります。
僕の場合、給付基礎日額14,000円だったので、働けなくなれば1日あたり11,200円が休業4日目から支給される計算でした。月にすると30万円強です。この金額なら生活は維持できる、という判断で日額を決めました。
※ 給付の内容・要件は改正される場合があります。実際の請求時は労働基準監督署または加入団体にご確認ください。
保険料は経費ではありません|税務の正しい扱い
ここは間違えやすいので、はっきり書いておきます。
- 労災保険料:必要経費にはならない。「社会保険料控除」の対象
- 年会費・入会金・更新手数料:必要経費として計上できる(諸会費など)
「労災保険料も経費で落とせる」と書かれている情報を見かけますが、保険料部分は経費ではなく所得控除(社会保険料控除)です。どちらも節税にはつながりますが、帳簿上の扱いが異なります。
会計ソフトを使っている場合は、保険料部分と会費部分を分けて入力しておくと、確定申告のときに迷いません。
※ 税務の取り扱いは個別の事情によって異なる場合があります。判断に迷う場合は、税理士や所轄の税務署にご確認ください。
労災保険とフリーナンス「あんしん補償」の違い
労災保険と混同されやすいのが、フリーナンスの「あんしん補償」です。この2つは守備範囲がまったく違います。
- 労災保険(特別加入):自分が業務中・通勤中にケガや病気をしたときの補償
- フリーナンスのあんしん補償:業務上の事故や納品物の欠陥などで相手方に損害を与えたときの賠償補償
つまり、「自分がケガをする」リスクに備えるのが労災、「相手に迷惑をかけてしまう」リスクに備えるのが賠償補償です。どちらか一方があれば足りるという関係ではありません。
僕は独立した2020年から2025年まで、フリーナンスに登録していました。所得補償の「あんしん補償プラス」に月額1,950円で加入し、独立当初に感じていた「働けなくなったときの収入」への不安に備えていました。
2025年に、加入している保険を全体的に見直したタイミングで、フリーナンスの補償は自分には使わないと判断して退会しました。同じ2025年から、この記事で紹介している労災保険の特別加入へ移りました。
入るべきか判断するためのチェックリスト
実際には1年ほどの加入で脱退しましたが、その経験から判断の目安を挙げます。
加入を検討したほうがいい人
- クライアント先に常駐する、または現場作業や出張が多い
- 移動を伴う案件が多い(通勤災害も対象になるため)
- 扶養する家族がいて、働けなくなると生活に直結する
- 貯蓄(生活防衛資金)がまだ十分でない
優先度が下がる人
- 完全在宅で、移動も現場作業もほとんどない
- 生活防衛資金が十分にあり、数ヶ月働けなくても耐えられる
- すでに所得補償保険などで同等の備えがある
- 会社員に戻る予定がある(労災が自動適用されるため)
年間で数万円の固定費です。「なんとなく不安だから」で入るのではなく、働けなくなったときに何ヶ月耐えられるかを計算したうえで判断するのがおすすめです。
よくある質問
Q. 在宅ワーク中のケガも労災の対象になりますか?
業務遂行中であれば対象となる場合があります。ただし業務との関連性が問われるため、実際の認定は個別判断です。判断に迷う場合は労働基準監督署に確認してください。
Q. 会社員になったら脱退すべきですか?
会社員は労災保険が自動的に適用されるため、特別加入を続ける必要はありません。僕も会社員になったタイミングで脱退しました。
Q. 給付基礎日額はいくらに設定すればいいですか?
働けなくなったときに生活を維持できる金額から逆算するのがおすすめです。休業補償は日額の80%なので、「必要な生活費 ÷ 0.8」が目安になります。僕は14,000円に設定していました。
まとめ|使わなかったけれど、後悔はしていない
- フリーランスも特別加入で労災保険に入れる(2024年11月から対象が拡大)
- 僕は社会保障の薄さが不安で、給付基礎日額14,000円・年27,000円で2025年から約1年加入した
- 結果として一度も使わず、会社員に戻ったタイミングで脱退した
- 保険料は経費ではなく社会保険料控除。会費部分は経費
- 常駐・出張・移動が多い人ほど、加入の意味は大きい
労災保険は、使わずに終わるのが一番いい制度です。僕も一度も使わないまま脱退しました。
それでも、「働けなくなっても最低限は守られている」という前提があったから、案件に集中できた面はあると思っています。フリーランスの社会保障の薄さに不安を感じているなら、その不安を数万円で軽くできる選択肢がある、と知っておくだけでも意味があります。
大切なのは、入るか入らないかをなんとなくではなく、自分の働き方と貯蓄から判断することです。この記事が、その判断材料になればうれしいです。




