
- 案件中にケガをしたら仕事が止まってしまうのでは?
- 在宅勤務中の事故は自己責任になるの?
- クライアント先でのトラブルに備える保険ってあるの?
フリーランスエンジニアとして働く中で、次のような不安はありませんか?
こうしたリスクに対して何の備えもないと、収入が途絶えるだけでなく、治療費も全額自己負担になる可能性があります。
実は、フリーランスでも「労災保険」に加入できる方法があります。
本記事では、エンジニアとして独立・活動している方に向けて、「特別加入制度」を使った労災保険の仕組み・加入方法・費用・メリットをわかりやすく解説します。
筆者はフリーランス歴5年、複数の保険制度を比較検討してきた経験をもとに、実践的な情報をまとめました。
この記事を読むことで、「どんなときに労災が使えるのか」「どうすれば加入できるのか」が明確になります。
結論として、フリーランスエンジニアでも特別加入制度を利用すれば労災保険に加入可能です。
安心して働き続けるために、まずは仕組みを正しく理解しておきましょう。
Contents
フリーランスエンジニアでも労災保険に入れる?【結論:特別加入で可能】
労災保険の基本と、なぜフリーランスは原則対象外なのか
労災保険は、労働者が業務中や通勤中にケガ・病気・死亡した際に補償を受けられる制度です。
会社員であれば自動的に加入していますが、フリーランスは雇用関係がないため原則対象外になります。
そのため、業務中に事故が起きても「労災」として認められず、治療費や休業補償を自分で負担するケースが多いです。
2024年11月1日からは、フリーランス新法により特別加入の対象範囲が大幅に拡大され、ほぼ全ての業種のフリーランスが対象となりました。
これまでは、一部のフリーランス(一部の業種・職種)については「特別加入制度」を利用し、労災保険に加入することが可能でした。
厚生労働省『令和6年11月1日から「フリーランス」が労災保険の「特別加入」の対象となりました』
「特別加入制度」とは?概要と仕組みをわかりやすく解説
「特別加入制度」とは、通常は労働者のみが対象の労災保険に、自営業者や一人親方も任意で加入できる制度です。
この制度を利用すれば、フリーランスエンジニアでも業務上のケガや事故に対して国の補償を受けられます。
制度の運営は、各地の「労働保険事務組合」を通じて行われます。
加入を希望する場合は、これらの団体に申し込みを行い、事務組合が代わりに手続きを進めます。
フリーランスエンジニアが特別加入できる条件と対象業種
まず、特別加入には以下の条件が求められます。
- 一人で事業を行っている(法人代表も可)
- 企業等から「業務委託」で継続的に仕事を受けている
- 委託を受けている業務が特定フリーランス事業以外の特別加入の事業または作業に該当しない
また、フリーランスエンジニアが特別加入できるかどうかは、業務・作業の対象範囲によって判断されます。
原則として以下の業務・作業をされる方が対象になります。
- 情報処理システム(※1)の設計、開発(※2)、管理、監査、セキュリティ管理
- 情報処理システム(※1)に関する業務の一体的な企画
- ソフトウェアやウェブページの設計、開発、管理、監査、セキュリティ管理、デザイン
- ソフトウェアやウェブページに関する業務の一体的な企画その他の情報処理
※1 ネットワークシステム、データベースシステムおよびエンベデッドシステムを含む
※2 プロジェクト管理を含む
- ITコンサルタント
- システムエンジニア
- プログラマ
- 運用保守エンジニア
- データサイエンティスト
- Webデザイナー
など
労災保険の補償内容と、加入によるメリット・デメリット
労災保険で受けられる主な補償(療養・休業・障害・遺族)
労災保険では、次のような補償を受けることができます。
- 療養補償給付:業務中や通勤中のケガ・病気の治療費が全額支給される
- 休業補償給付:働けない期間、給付基礎日額の80%が支給される
- 障害補償給付:後遺障害が残った場合に支給される
- 遺族補償給付:死亡した場合、遺族に対して支給される
エンジニア業務はデスクワーク中心ですが、出張や現場作業、機材トラブルなど思わぬ事故のリスクもあります。
フリーランスエンジニアが加入するメリット
- 仕事中・移動中のケガも補償される安心感
- 治療費が全額補償されるため、経済的負担が軽減
- クライアント先での事故にも適用可能
- 加入していることで信用度が上がる
- 保険料を経費として計上できる
万が一のリスクに備えられるだけでなく、取引先から「きちんとした個人事業主」と見られる信頼性向上にもつながります。
注意点・デメリット・加入しない場合のリスク
一方で、次のようなデメリットや注意点もあります。
- 保険料は自己負担(年額数万円程度)
- 業務と無関係なケガは対象外
- 加入手続きにやや時間がかかる場合も
加入していない場合、仕事中のケガで長期休業となると、収入ゼロのまま生活費や治療費を自己負担することになります。
労災保険の加入方法と手続きの流れを具体的に紹介
加入先の選び方(労働保険事務組合・団体加入)
特別加入は、労働保険事務組合を経由して行うのが一般的です。
たとえば、ITフリーランス向けに特別加入を扱っている団体も多数あります。
加入実績がある団体を選ぶことで、手続きがスムーズに進みます。
申請に必要な書類と手続き手順
手続き主な流れは以下の通りです。
- 加入先団体を決定
- 申請書類(特別加入申請書、事業内容の概要など)を提出
- 労働基準監督署の承認を得る
- 初回の保険料を納付
- 加入先団体によっては、Web申込での受け付けになることもあります。
- 加入までの期間は数日〜1週間が目安です。
保険料の目安と支払い方法
保険料は自身で決めた「給付基礎日額」に基づいて算出され、年額で支払います。
ITフリーランス保険組合では、Webサイトにてお見積りで保険料を確認することができます。
保険料は、口座振替または銀行振込で支払うことが一般的です。
他の保険との違いと、併用すべき補償制度
労災保険と民間の傷害・所得補償保険の違い
民間の傷害保険や所得補償保険は、労災よりも幅広い範囲をカバーしますが、補償内容が契約ごとに異なるため注意が必要です。
労災保険は公的制度のため、信頼性が高く安定しています。
健康保険・国民年金との関係
業務中(通勤途中を含む)の怪我や病気は、健康保険ではなく 労災保険 が適用されるため、健康保険は使用できません。
労災保険があれば、医療費全額補償+休業中の所得補填が可能になります。
年金制度とも重複せず、独立した公的保障として機能します。
労災保険だけでは足りない場合の備え方
高収入エンジニアや家族を養っている人は、民間保険との併用がおすすめです。
特に「収入保障保険」を組み合わせると、万一就業不能となった場合の経済的な不安もカバーできます。
フリーランスエンジニアが労災保険に入るべきか判断するチェックリスト
こんな働き方の人は加入を検討すべき
これらに当てはまる人は、労災保険の加入を強く検討すべきでしょう。
- クライアント先に常駐することが多い
- 出張や現場作業を伴う案件がある
- 一人で作業している時間が長い
- 安定収入よりも案件単位で働いている
実際のトラブル事例と学べるポイント
実際に、フリーランスエンジニアとして働く中で「まさか自分が労災に…」というケースは少なくありません。
ITフリーランス保険組合(出典:ITフリーランス支援労災保険制度|お客様の声
)では、加入者から次のような事例が報告されています。
事例① クライアント先での作業中に転倒し、全治3か月のケガ
常駐案件で作業をしていたエンジニアが、機材の配線を整えている際に足を滑らせ転倒。
手首を骨折し、3か月間の業務停止を余儀なくされました。
もし労災保険に加入していなければ、治療費やリハビリ費用、休業期間中の収入はすべて自己負担になります。
特別加入していたことで、治療費が全額補償され、さらに休業中も給付金が支給されました。
学べるポイント
クライアント先での作業は「業務中」として明確に労災対象になります。
常駐・出張のある働き方には労災保険の備えは必要でしょう。
事例② 在宅ワーク中に椅子から転倒し腰を負傷
自宅で長時間コーディングをしていたフリーランスエンジニアが、椅子から転倒して腰を強打。
その結果、数週間にわたって立ち仕事や移動が困難になりました。
一見、在宅中の事故は自己責任と思われがちですが、業務中であれば労災の対象となる場合があります。
実際にこの方も特別加入していたことで、治療費と休業補償が支給されました。
学べるポイント
「在宅ワークだから関係ない」と思っていても、業務遂行中の事故なら労災が適用されるケースがあります。
労災の特別加入は、オフィス勤務だけでなく在宅フリーランスにも有効な備えです。
事例③ 通勤中の交通事故で負傷
案件先への移動中、バイクで交通事故に遭い、腕と足にケガを負ったフリーランスエンジニアの例もあります。
このケースでは、通勤災害として労災が適用され、治療費・休業補償・通院交通費のすべてが給付対象になりました。
学べるポイント
「通勤中」や「取引先訪問中」の事故も、労災の補償対象になります。
フリーランスでも、移動を伴う仕事をしている人は加入しておくことで大きな安心が得られます。
総括:フリーランスにとって労災は「最後のセーフティネット」
上記のように、労災保険があるかどうかで経済的・精神的なダメージは大きく変わります。
自分の健康管理を徹底していても、突発的な事故を完全に防ぐことはできません。
労災の特別加入は、決して「過剰な保険」ではなく、自分の仕事を守るための最低限の備えといえます。
まとめ|労災保険の加入で「仕事中の安心」を手に入れよう
記事全体のまとめ
- フリーランスエンジニアでも「特別加入制度」で労災保険に加入できる
- 加入すれば、業務中や通勤中のケガ・事故の補償を受けられる
- 加入には労働保険事務組合を通じた手続きが必要
- 年間数万円の負担で、安心と信用を得られる
- 保険料は経費計上が可能
これから加入を考える人へのアドバイス
労災保険は、フリーランスとしてのリスク管理の基本です。
フリーランスエンジニアにとって、労災保険は「まだ自分には関係ない」と思われがちです。
しかし実際には、在宅中の転倒やクライアント先での事故など、思いがけないトラブルは誰にでも起こり得ます。
この記事を読んだ今こそ、行動のタイミングです。
まずは、あなたの業種が特別加入の対象かどうかを調べてみましょう。
数万円の保険料で、仕事中の不安を大きく減らすことができます。
「備えがあるからこそ、自由に働ける」 その安心を、今のうちに手に入れてください。

