小規模企業共済の貸付限度額と注意点を知ろう

小規模企業共済の貸付限度額と注意点を知ろう マネー
  • 小規模企業共済の貸付とは?
  • 貸付可能額はどのように決まる?
  • 貸付利用時に何か気をつけることはある?

実際に小規模企業共済を利用して「貸付可能額がいつ・どのように決まるのか」イメージしにくい点もあったので、この記事で解説していきます。

本記事の内容

  • 小規模企業共済の貸付制度
  • 小規模企業共済の貸付限度額の決まり方
  • 小規模企業共済の貸付利用時に注意したいこと



僕は、2022年12月から小規模企業共済に加入しています。
小規模企業共済の貸付制度を利用することで、自分で積み立てた掛金を理由問わずに借入することができます。

小規模企業共済の貸付手続きをする際の窓口や利用の流れについて、以下の記事で解説しています。
参考にしてみてください。
【実際に利用してみた】小規模企業共済の貸付手続き窓口と利用の流れ

【実際に利用してみた】小規模企業共済の貸付手続き窓口と利用の流れ

小規模企業共済の貸付制度

貸付の種類

一般貸付

一般貸付は、加入者が事業資金などを簡易かつ迅速に借りられる制度です。

・借入可能額:掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7〜9割)かつ10万円以上2,000万円以内(5万円単位)
・利率:年1.5%

特別貸付

特別貸付は、特別な事情がある場合に限り認められる貸付制度です。
下記のように状況に応じた種類の貸付を申し込みすることができます。

緊急経営安定貸付け

経済環境の変化などによる一時的な売上減少により、資金繰りに著しく困難な場合に利用できます。

・借入可能額:掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7〜9割)かつ50万円以上1,000万円以内(5万円単位)
・利率:年0.9%

傷病災害時貸付け

疾病や負傷による入院の場合、または、地震・台風・大雪などの災害により被害を受けた場合に、経営の安定化を図るために利用できます。

・借入可能額:掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7〜9割)かつ50万円以上1,000万円以内(5万円単位)
※さらに、(流動負債-当座資金)+1/2(給与+賃金+その他経費)の計算で算出した額が1.000万円を超える場合にはその額を借入れ可能です
・利率:年0.9%

福祉対応貸付け

共済契約者または同居する親族の福祉向上のために必要な住宅改造資金、福祉機器購入などの資金を借入れすることができます。

・借入可能額:掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7〜9割)かつ50万円以上1,000万円以内(5万円単位)
・利率:年0.9%

創業転業時・新規事業展開等貸付け

創業転業時貸付けは、掛金納付月数通算制度の利用で新規開業・転業後に再度共済契約を結ぶ場合に借入れできる制度です。

・借入可能額:掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7〜9割)かつ50万円以上1,000万円以内(5万円単位)
・利率:年0.9%

事業承継貸付け

事業承継(事業用資産または株式などの取得)に要する資金を低金利で借入れできます。

・借入可能額:掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7〜9割)かつ50万円以上1,000万円以内(5万円単位)
・利率:年0.9%

廃業準備貸付け

個人事業の廃止または会社の解散を円滑に行うために、設備の処分費用や事業債務の清算などの廃業の準備に要する資金を借入れすることができます。

・借入可能額:掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7〜9割)かつ50万円以上1,000万円以内(5万円単位)
・利率:年0.9%

参考:契約者貸付の概要

小規模企業共済の貸付限度額の決まり方

小規模企業共済の貸付限度額の決まり方

借入資格要件

一般貸付制度の借入資格要件は、以下のように定められています。

・加入後、貸付資格判定時(4月末日および10月末日)までに、12か月以上の掛金を納付していること。(※前納掛金は含まない)
・納付した掛金から算定した貸付限度額が、貸付資格判定時において10万円以上に達していること。

加入から1年以上掛金を納付していること&算定される貸付限度額が10万円以上に達していることが、一般貸付を利用するためには必要です。

貸付資格判定時のタイミングも年2回のため、自分が実際に加入した月によって貸付を利用できるまでの期間が変わってきます。

貸付限度額の決まり方

貸付限度額は、加入後の1年経った後の最初の4月末日or10月末日を算定基準日として貸付限度額が決まります

実例:僕の場合だと
2022年12月:小規模企業共済に加入
2023年12月:加入から1年経過
2024年4月 :最初の借入限度額が決まる
2024年8月 :借入資格取得通知書(貸付限度額のお知らせ)が届く
2024年10月:最初の借入限度額で借入可能になる/新しい借入限度額が決まる
2025年4月 :前年10月に決まった新しい借入限度額で借入可能になる

僕の場合、実際に一般貸付が利用可能になるタイミングは加入から1年10ヶ月後でした。

もし最短で貸付を利用したい場合でも、3月or9月のタイミングで加入したとして、貸付可能になるまで1年6ヶ月経過する必要があります。

貸付限度額の計算方法

小規模企業共済の貸付制度で実際に借りられる限度額は、掛金月額と加入期間から以下の計算式で算出できます。

掛金残高[=掛金月額×加入期間(月数)]×0.7〜0.9=借り入れ限度額

正確な限度額は、半年に1回中小機構から送られてくるハガキで確認することができます。
または、掛金と加入期間を把握していれば自分でも概算が可能です。

毎月の掛金は1,000円〜7万円の間で選択でき、積み立てた金額次第で限度額が変わります。

実例:僕の場合の借入限度額を計算

僕の場合を例に、最初の借入限度額を計算してみます。
期間の途中で掛金変更もしているので、少し複雑になりますがご参考までに。

実例:僕の場合の借入限度額
2022年12月〜2023年7月:加入(掛金1万円)×8ヶ月=8万円
2023年8月〜2023年12月:掛金変更(掛金2万円)×5ヶ月=10万円
2024年1月〜2024年4月 :掛金変更(掛金7万円)×4ヶ月=28万円

2024年4月末日(算出基準日):掛金残高:46万円×0.7≒30万円
※限度額は5万円単位に決まります

借入資格取得通知書

小規模企業共済の貸付利用時に注意したいこと

事前に必要書類などを用意

小規模企業共済の貸付制度は審査がない代わりに、身元確認をする目的で複数の書類を提出する必要があります
窓口での手続きに必要書類などを用意しておきましょう。

・印鑑登録証明書(発行後3ヶ月以内の原本
・実印
・本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード・保険証など)
・収入印紙(借入金額に応じた金額の印紙
・契約者番号がわかる書類(貸付限度額のお知らせのハガキ・共済手帳など)

印鑑登録証明書は発行から3ヶ月以内の原本のみが有効であるため、事前に市役所で手続きしておくことが必要です。

運転免許証や保険証などの本人確認書類は、記載されている情報が事実と異なる場合は借りられなくなる恐れがありますので事前に確認しておくことが良いです。

借入申し込み時に収入印紙が必要

小規模企業共済の貸付制度を利用する際に必要な収入印紙の金額は、以下のとおりです。

借入金額 収入印紙の金額
10万円 200円
15万円〜50万円 400円
55万円〜100万円 1,000円
105万円〜500万円 2,000円
505万円〜1,000万円 1万円
1,005万円〜2,000万円 2万円

小規模企業共済の貸付制度では金銭消費貸借契約書を作成することから、借り入れ時には印紙税法に則って適切な印紙税を納めなければいけません。

収入印紙の金額が異なる場合は脱税となり、罰金として通常の3倍の金額を支払う必要があるので注意してください。

納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合には、その納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額(すなわち印紙税額の3倍)に相当する過怠税を徴収される

出典:国税庁 印紙を貼り付けなかった場合の過怠税

収入印紙は郵便局で取り扱っていますので、必要な金額分の収入印紙を購入してから窓口に行くようにしましょう。

利息は前払い

小規模企業共済の貸付制度は利息を前払いする仕組みのため、実際に受け取れる金額は借り入れ希望額よりも少なくなります。

返済期間 借入時に支払う利息
12ヶ月 全額
24ヶ月以上 6ヶ月分の利息
例:一般貸付で100万円借りる場合
借入可能額100万円から利息1.5%(1万5,000円)が先に引かれます。
実際に手元に入るのは98万5000円になります。

まとめ

小規模企業共済の貸付制度を利用することで、小規模企業共済のメリットでもある所得控除を受けつつ、手元にお金を残すことができます。

小規模企業共済に1年以上加入している経営者なら、積み立てた掛金の7〜9割まで融資を受けられます
加入期間が長い場合は最高2,000万円まで保証人なしで借りられますので、急な出費に困った時にも活用できます。

小規模企業共済のこと、貸付制度を利用して資産運用する内容についてをこちらの記事で解説しています。

小規模企業共済を活用して節税&資産運用する

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