
- フリーランスエンジニアって、経費にできるものが少なくない?
- SaaSの月額課金やクラウドサービスの勘定科目がわからない
- 自宅の家賃や光熱費、按分率はどう決めればいい?
僕はフリーランスエンジニアとして6年間、毎年自分で確定申告をしてきました。
最初の確定申告では、「エンジニアって仕入れもないし、PCとネットがあれば仕事できるし、経費にできるものが全然ないのでは…」と不安に感じていました。
実際、フリーランスエンジニアの経費率は他業種と比べて低めです。でも、それは「経費にできるものが少ない」のではなく、「計上できるのに気づいていない経費」が多いだけでした。
SaaSの月額課金、クラウドサービス、技術書、オンライン講座、自宅の家賃や光熱費…一つひとつは少額でも、積み重ねると年間で大きな差になります。
この記事では、フリーランスエンジニアに特化して、何をどの勘定科目で経費にできるか、自宅費用の按分計算はどうやるか、税務調査にはどう備えるかを、実体験をもとに解説します。
経費・控除・共済・ふるさと納税の全制度を効果が大きい順に整理しています。
Contents
フリーランスエンジニアの経費率が低い理由と対策
フリーランスエンジニアの経費率は10〜30%が一般的で、他業種より低めですが、これは職種の構造的な特徴で問題ありません。経費率の相場や実際の内訳データが気になる方は、別記事で公開しています。
この記事では、その中でも判断に迷いやすい「自宅費用の家事按分」と「税務調査への備え」に絞って、実務的に解説します。
エンジニアが経費にできるもの|カテゴリ別一覧と勘定科目
エンジニアが経費にできる項目は、SaaS・クラウド、PC・周辺機器、技術書・講座、交通費など多岐にわたります。何が経費になり何がならないかを勘定科目つきで確認したい方は、一覧記事を辞書としてお使いください。
ここからは、その中でも金額が大きく判断も難しい「自宅費用の家事按分」を、計算方法から税務調査対策まで掘り下げます。
自宅家賃・光熱費の按分計算|エンジニアの作業環境での考え方
自宅で仕事をしているフリーランスエンジニアなら、家賃・電気代・通信費などの一部を経費にできます。これを「家事按分」といいます。
按分率の計算方法は2パターン
按分率を決める方法は大きく2つあります。どちらを使ってもOKですが、費用の種類によって向き不向きがあります。
面積で按分する(家賃向き)
仕事専用のスペースがある場合は、面積割合で按分するのが最もシンプルで説得力があります。
仕事部屋:9㎡(6畳)
按分率:9 ÷ 60 × 100 = 15%
僕の場合は1LDKの一室を完全に仕事部屋にしていたので、間取り図をもとに面積を計算して15%程度で設定していました。
時間で按分する(光熱費・通信費向き)
電気代やインターネット回線など、面積では区別しにくい費用は、業務に使っている時間の割合で按分します。
按分率:8 ÷ 24 × 100 = 約33%
エンジニアの作業環境を考慮した按分率の目安
エンジニアの作業環境は、一般的なフリーランスより電力消費が多い傾向があります。高スペックPC、外部モニター1〜2台、常時稼働の開発環境など、仕事中の電気使用量はプライベートより明らかに多いケースが大半です。
| 項目 | 按分率の目安 | エンジニアならではの考慮点 |
|---|---|---|
| 家賃 | 10〜25% | 仕事部屋がある場合は面積割合で |
| 電気代 | 25〜40% | 高スペックPC・モニター複数台で消費電力が多い |
| インターネット | 70〜90% | 光回線はほぼ業務用途。業務依存度が高いなら80〜90%も妥当 |
| スマートフォン | 30〜50% | Slack・GitHubの通知確認、クライアント連絡に使用 |
| 水道代 | 5〜10% | 業務との関連性は低い |
| ガス代 | 5〜10% | 業務との関連性は低い |
例えばインターネット回線を90%で按分する場合、「リモート開発・ビデオ会議・クラウドサービスへの接続で業務中は常時使用。プライベートでの利用はスマホのモバイル回線を使用している」という説明ができれば十分です。
【シミュレーション】エンジニアの按分でいくら節税できる?
実際にどれくらいの節税効果があるのか、エンジニアの作業環境を前提にした具体的な数字で見てみましょう。
- 家賃:月額10万円(按分率15%)
- 電気代:月額1.2万円(按分率35%)
- インターネット:月額5,000円(按分率80%)
- スマートフォン:月額8,000円(按分率40%)
- 家賃:100,000円 × 15% = 15,000円
- 電気代:12,000円 × 35% = 4,200円
- インターネット:5,000円 × 80% = 4,000円
- スマートフォン:8,000円 × 40% = 3,200円
月間合計:26,400円
年間合計:316,800円
課税所得400万円(所得税率20%+住民税率10%)の場合:
316,800円 × 30% = 年間約9.5万円の節税
これに前のセクションで紹介したSaaS・学習費・ハードウェアの経費を合わせると、経費総額はさらに大きくなります。
例えばChatGPT Plus(年3.6万円)+技術書5冊(年1.5万円)+Udemy講座2本(年0.3万円)+モニター購入(4万円)を加えると、年間約41万円の経費になります。
経費計上でよくある失敗パターン3選
失敗①:根拠のない按分率を設定する
ワンルームで50%は明らかに不自然です。税務調査で「なぜこの割合なのか」と聞かれたときに答えられなければ、経費が否認されます。
対策:按分率は「なぜこの割合か」を必ず説明できるようにしておくこと。間取り図を保管する、業務時間を記録する、などの根拠資料を残しましょう。
失敗②:領収書をため込んで年末にまとめて処理する
紛失した分は経費として計上できず、節税の機会をそのまま失います。僕も最初の年は3ヶ月分をまとめて処理しようとして、何枚かのレシートが見つからず困った経験があります。
対策:会計ソフトのスマホアプリでレシートを撮影し、その場でデータ化する習慣をつけましょう。週1回程度の仕訳チェックを習慣にすると、年末に慌てません。
失敗③:按分率を毎年コロコロ変える
按分率を頻繁に変更すると、税務署から「恣意的に操作しているのでは」と疑われます。
対策:一度設定した按分率は、生活環境が変わらない限り継続して使う。引っ越しや仕事部屋の変更など、明確な理由があるときだけ変更し、その理由を記録しておきましょう。
税務調査に備える|エンジニアが日頃から準備すべきこと
フリーランスに税務調査が来る確率は高くありませんが、来たときに慌てないための準備は必要です。
保管しておくべき資料チェックリスト
- 領収書・レシート(デジタル化して月別に整理)
- 銀行明細・クレジットカード明細
- 業務に関連する契約書・請求書
- 間取り図・仕事部屋の写真(按分の根拠)
- 按分計算の記録(面積・時間の計算根拠)
- SaaSサービスの契約・支払い画面のスクリーンショット
- PC・周辺機器の購入明細(事業使用割合のメモ付き)
- 技術書の一覧(どの案件・業務に関係するかメモ)
個人事業主の書類保管義務は原則5年(青色申告の帳簿は7年)です。クラウド会計ソフトでデジタル保管しておけば、紛失リスクも減らせます。
使っていた会計ソフト(マネーフォワード)のエンジニア目線のレビューはこちらをご参考ください。
業務日誌をつけておく
「この日にこの仕事をしていた」という記録は、経費の事業関連性を証明する強力な材料です。
エンジニアなら、Gitのコミット履歴やプロジェクト管理ツール(Jira、Notion、Backlog等)のタスク履歴が実質的な業務日誌の代わりになります。「○月○日にこの案件の開発をしていた」という証拠として使えるので、普段からこうしたツールで作業記録を残しておくと安心です。
カレンダーに「○○案件の開発」「△△社と打ち合わせ」と簡単にメモしておくだけでも、いざというとき大きな助けになります。
調査当日の対応
税務調査で大事なのは、隠さないこと・慌てないこと・わからないことは「わからない」と正直に答えることです。
- 「なぜこの経費が業務に必要だったか」を説明できるようにする
- 「なぜこの按分率にしたか」の根拠を示す
- 「継続的に記録管理していること」を伝える
日頃から根拠資料を整理しておけば、調査が来ても特別な準備は必要ありません。
著者は元国税調査官で、調査官がどこに目をつけるのか、どう備えればいいのかを「内側」の視点で解説しています。
本記事の按分・税務調査対策とあわせて読むと、根拠を持って安心して経費を計上できるようになります。
毎月・年末の経費チェックリスト
経費計上の精度を保つために、定期的なチェックを習慣にしましょう。
毎月やること(所要時間:約15分)
- □ 会計ソフトの未確定仕訳をチェック(カード連携の自動取込み分)
- □ SaaS・サブスクの引き落とし一覧を確認
- □ 現金払いのレシートをスマホで撮影・登録
- □ 事業用とプライベートの支出が混ざっていないか確認
年末にやること(所要時間:約1〜2時間)
- □ 年間の経費総額を確認
- □ 按分率が実態と合っているか見直し
- □ SaaSサービスの契約一覧を見直し(解約忘れ・新規追加がないか)
- □ 領収書の保管漏れがないかチェック
- □ 自宅オフィスの写真を撮って更新
- □ PC・周辺機器の按分率メモを更新
- 年収が大きく変動した年(前年比50%以上の増減)
- 按分率の根拠を自分で説明しきれない
- 経費率が異常に高い(50%以上)
- 初めての確定申告で不安が大きい
青色申告・小規模企業共済・iDeCoなど他の対策とあわせて設計すると、手取りはさらに増えます。フリーランスの節税の全体像はこちらでまとめています。
まとめ|エンジニアの経費計上で損しないために
フリーランスエンジニアの経費計上で大切なのは、以下の3点です。
- SaaS・クラウド・学習費を漏れなく計上する(月額課金は忘れがち)
- 自宅費用は面積or時間で按分し、根拠を記録する(按分率は一定に保つ)
- 会計ソフトで自動化し、月次でチェックする(年末まとめ処理は失敗のもと)
エンジニアの経費率が低いのは職種の特性であり、低いこと自体は問題ありません。大事なのは計上できるものを漏れなく計上することです。
正しく経費を計上し、按分の記録を残すだけで、年間数万円〜十万円以上の節税になります。「面倒だからやらない」は、毎年お金を捨てているのと同じです。






