
- SESからフリーランスに転向したいけれど、本当に得なのか分からない
- SESとフリーランスでどう変わる?
SESエンジニアとして安定した収入を得ているものの、マージンを取られることに疑問を感じている方も多いはずです。
フリーランスに転向するとしても、収入の不安定性や社会保険の負担、営業活動の手間など、多くの課題に直面する不安があると思います。
この記事は、SESからフリーランスへの転向を考えている方に向けて、両者の違いを詳しく解説します。契約形態や収入構造、社会保障、税金の違いを具体的な数字で比較し、転向の判断材料を提供します。
記事を読むことで、SESとフリーランスの収入差やリスクの違いを明確に理解できます。また、転向に必要な資金準備や手続き、営業方法まで実践的な情報を得られます。さらに、経理処理や確定申告のポイントも解説するため、転向後の不安も解消できます。
SESとフリーランスの選択は、あなたのキャリアにとって重要な決断です。この記事を参考に、自分に合った選択をしてください。転向を決意した方は、十分な準備期間を設けて計画的に進めることをお勧めします。
Contents
SESとは
SESの定義と仕組み
SESとは「System Engineering Service」(システムエンジニアリングサービス)の略で、IT企業がクライアント企業に技術者を派遣し、システム開発や運用業務を請け負う契約形態です。
SES企業は技術者を雇用し、クライアント企業に常駐させて業務を遂行します。
技術者はSES企業の社員として働き、給与や社会保険の保障を受けます。一方で、クライアント企業は技術者の人月単価をSES企業に支払います。
この仕組みにより、クライアント企業は技術者の採用や管理の手間を省くことができます。
また、技術者は安定した雇用環境で様々なプロジェクトに携われるメリットがあります。
SESエンジニアの働き方
SESエンジニアは、SES企業に所属しながらクライアント企業のオフィスに常駐して働きます。
基本的にはクライアント企業の就業時間に合わせて勤務し、プロジェクトの進捗に応じて業務内容が決まります。
技術者はクライアント企業のチームに加わり、システム開発や保守運用業務を担当します。
ただし、雇用関係はSES企業にあるため、給与や評価は自社のSES企業が決定します。
プロジェクトが終了すると、次の案件にアサインされることが一般的です。
技術者は様々な企業やプロジェクトで経験を積むことができ、スキルアップの機会も多くあります。
SES企業の役割とマージン構造
SES企業は技術者の雇用管理とクライアント企業への営業活動を主な役割としています。
技術者の採用、教育、給与支払い、社会保険の手続きなどを担当します。
収益構造としては、クライアント企業から受け取る人月単価から技術者の給与を差し引いた差額がマージンとなります。参考程度ですが、一般的にマージン率は20%から40%くらいと言われています。
例えば、クライアント企業に月額100万円で技術者を提供する場合、技術者の給与が70万円であれば、SES企業のマージンは30万円となります。
このマージンで企業の運営コストや営業活動の費用を賄います。
SESとフリーランスの基本的な違い
契約形態の違い(会社員 vs 個人事業主)
SESエンジニアはSES企業の正社員または契約社員として働きます。
労働基準法に基づく雇用契約を結び、会社員としての権利と義務があります。給与の支払い、社会保険の加入、有給休暇の取得など、労働者として保護されます。
一方、フリーランスエンジニアは個人事業主として活動します。
クライアント企業と業務委託契約を結び、請負業務として働きます。雇用関係ではないため、労働基準法の適用外となり、自らが経営者として責任を負います。
- SESエンジニア:安定した雇用環境で働くことができる
- フリーランスエンジニア:より自由な働き方を選択できる
ただし、フリーランスは収入の不安定性や社会保険の自己負担などのリスクも伴うことを理解しておく必要があります。
収入構造の違い(給与 vs 報酬)
SESエンジニアの収入は月給制が一般的で、基本給に加えて残業手当や各種手当が支給されます。
給与は源泉徴収され、年末調整で所得税が精算されます。また、企業によりボーナスや退職金制度もあります。
SES企業は技術者の給与、社会保険料、教育費、営業費などのコストを差し引いた差額をマージンとして確保します。マージン率は企業によって異なりますが、通常20%から40%程度でしょう。
つまり、クライアント単価が100万円の場合、技術者の給与は60万円から80万円程度になります。
フリーランスエンジニアの収入は業務報酬として支払われます。
契約内容に応じて月額やプロジェクト単位で報酬が決まります。
源泉徴収される場合もありますが、基本的には確定申告で所得税を納税します。
収入面では、フリーランスの方が単価が高い傾向があります。
SES企業のマージンを経由しないため、同じスキルレベルでも高い報酬を得られる可能性があります。
働き方の自由度の違い
SESエンジニアは会社員なので、勤務時間や勤務場所が比較的固定されます。
クライアント企業の就業規則に従い、定時出勤や残業が求められることが多くなります。
また、参画プロジェクトの変更はSES企業が決定します。
フリーランスエンジニアは個人事業主になるため、より柔軟な働き方を選択できます。
勤務時間や勤務場所を交渉・条件で決められ、複数のクライアントと同時に契約することも可能です。
また、案件の選択も自分で行うことができます。
ただし、フリーランスは営業活動や案件獲得を自分で行う必要があります。フリーランス向けエージェントや同業者の紹介などを活用して、案件を探すことが重要です。
SESエンジニアは営業活動をSES企業が担当するため、技術に集中できる環境が整っています。
収入面での比較
フリーランスの単価と収入の可能性
フリーランスエンジニアの単価は、直接クライアント企業またはエージェントと交渉して決まります。
SES企業のマージンが発生しないため、同じスキルレベルでも高い単価を設定できる可能性があります。一般的に月額50万円から150万円程度の範囲で設定されることが多いです。
フリーランスの収入は、単価だけでなく稼働率も重要な要素です。
案件が途切れることなく継続的に働ければ、年収1000万円を超えることも可能です。
また、複数のクライアントと同時に契約することで、収入をさらに増やすこともできます。
ただし、フリーランスは営業活動や案件獲得のための時間も必要になります。
また、経費や社会保険料を自己負担するため、手取り収入は単価から差し引かれることは留意しなければなりません。
年収比較:SES vs フリーランス
SESエンジニアの年収は、経験年数やスキルレベルによって大きく異なります。以下は一般的な目安として挙げています。
フリーランスエンジニアの年収は、単価と稼働率によって大きく変動します。
月額100万円で12ヶ月稼働した場合、年収1200万円となります。
高単価案件を継続できれば良いですが、案件が途切れるリスクもあります。
安定性を重視するならSES、収入の最大化を目指すならフリーランスが適しています。
ただし、フリーランスは経験やスキル、営業力によって収入に大きな差が生じるため、準備期間を設けることも必要になってきます。
社会保障と税金の違い
健康保険・年金の加入形態
SESエンジニアは会社員として、SES企業の健康保険組合または協会けんぽに加入します。
保険料は給与から天引きされ、会社と従業員が折半で負担します。また、厚生年金にも加入し、将来の年金受給額も会社員として計算されます。
フリーランスエンジニアは国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。
保険料は全額自己負担となり、収入に応じて保険料が変動します。国民年金は厚生年金と比べて受給額が少なくなるため、将来の年金対策が重要になります。
また、フリーランスは社会保険料の負担が重いため、収入の増加に伴って保険料も大幅に上がる可能性があります。
一方で、SESエンジニアは給与に応じて保険料が決まるため、比較的安定した負担となります。
税金の違い(源泉徴収 vs 確定申告)
SESエンジニアの税金は、給与から源泉徴収され、年末調整で精算されます。
所得税は給与から自動的に天引きされ、年末調整で還付や追加納税が行われます。また、住民税も給与から天引きされるため、納税の手間は少なくなります。
フリーランスエンジニアは毎年の確定申告が必要です。
確定申告は複雑で手間がかかりますが、経費計上・制度活用による節税の可能性があります。
経費計上と節税の可能性
SESエンジニアの経費計上は限定的です。給与の収入額に応じて差し引かれる給与所得控除が適用されます。また、給与所得控除は収入に応じて自動的に計算されるため、大幅な節税は期待できません。
フリーランスエンジニアは、業務に関連する経費を幅広く計上できます。
主な経費項目として、パソコンやソフトウェアの購入費、書籍やセミナー参加費、交通費、通信費、事務用品代などがあります。また、自宅で作業している場合は、家賃や光熱費の一部を経費として計上できる可能性があります。ただし、自宅の一部を事務所として使用している場合のみ適用されます。
適切に経費として計上することで、所得を減らし税負担を軽減できます。ただし、経費の計上には適切な記録と領収書の保管が必要です。過度な経費計上は税務調査の対象となる可能性があるため、適切な範囲内で計上することが重要です。
リスクと安定性の比較
収入の安定性
SESエンジニアは会社員として働くため、安定した収入が期待できます。給与は毎月定期的に支払われ、残業手当や各種手当も含めて予測可能な収入を得られます。
また、プロジェクトが終了しても、SES企業が次の案件を確保してくれるため、収入が途切れるリスクは比較的低くなります。
フリーランスエンジニアの収入は、案件の獲得状況や稼働率によって大きく変動します。案件が途切れると収入がゼロになる可能性があり、営業活動やスキルアップの時間も必要です。
また、クライアント企業の都合で契約が突然終了するリスクもあります。
ただし、フリーランスは複数のクライアントと契約することで、リスク分散を図ることができます。また、高単価の案件を獲得できれば、SESエンジニアを上回る収入を得ることも可能です。
社会保険の保障内容
SESエンジニアは厚生年金と健康保険に加入するため、手厚い社会保障を受けることができます。厚生年金は国民年金に上乗せされるため、将来の年金受給額が多くなります。また、健康保険の給付内容も充実しており、傷病手当金や出産手当金などの制度も利用できます。
フリーランスエンジニアは国民年金と国民健康保険に加入します。国民年金の受給額は厚生年金と比べて少なく、将来の年金生活に不安を感じる人も多いです。また、国民健康保険には傷病手当金などの制度がないため、病気やケガで働けなくなった場合の保障が限定的です。
ただし、フリーランスは小規模企業共済やiDeCoなどを活用することで、将来の保障を補強することができます。
税務リスクと対策
SESエンジニアの税務リスクは比較的低くなっています。給与所得は源泉徴収され、年末調整で精算されるため、納税漏れのリスクは少なくなります。また、SES企業が税務処理を代行するため、個人での税務対応は不要です。
フリーランスエンジニアは確定申告を自ら行う必要があり、税務リスクが高くなります。経費の計上ミスや申告漏れ、記帳の不備などにより、税務調査の対象となる可能性があります。また、青色申告の要件を満たしていない場合、税制上の優遇措置を受けられません。
税務リスクを軽減するためには、適切な記帳と領収書の保管、会計ソフトや税理士の活用、青色申告の申請などが重要です。また、経費計上は適切な範囲内で行い、過度な節税は避けることが必要です。
SESからフリーランスへの転向準備
必要な資金準備(貯金・運転資金)
フリーランスへの転向には、十分な資金準備が不可欠です。最低でも6ヶ月分の生活費に相当する貯金を確保することをお勧めします。SESエンジニアの給与を基準に、月給30万円の人なら、180万円くらいは準備しておきたいところです。
また、運転資金として初期費用も考慮する必要があります。パソコンやソフトウェアの購入費、事務用品、名刺代など、最低でも50万円程度の初期投資が想定されます。さらに、確定申告のための会計ソフトや税理士費用、社会保険料の前払いなども必要になります。
案件が途切れた場合の収入減少や、営業活動のための時間確保も考慮に入れる必要があります。安定した収入を得るまでに時間がかかる可能性があるため、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。
スキル・経験の棚卸し
フリーランスとして成功するためには、技術スキルだけでなく営業力や自己管理能力も必要です。
まず、これまでのSESでの経験を整理し、どのような技術分野で強みがあるかを明確にしましょう。
プロジェクト管理やチームリーダー経験など、技術以外のスキルも評価の対象になります。
営業力については、クライアントとのコミュニケーション能力や、案件獲得のためのネットワーク構築が重要です。SES時代のクライアント企業との関係性や、業界での人脈も活用できる可能性があります。
また、自己管理能力として、スケジュール管理や健康管理、継続的なスキルアップの習慣も必要です。フリーランスは自分で全てを管理する必要があるため、これらの能力が成功の鍵となります。
必要な書類・手続き
フリーランスとして活動を開始するには、いくつかの手続きが必要です。
まず、個人事業主としての開業届を税務署に提出する必要があります。また、青色申告の承認申請書も同時に提出することで、税制上の優遇措置を受けることができます。
社会保険の手続きも重要です。SES企業を退職する際は、健康保険の任意継続や国民年金への加入手続きを行います。また、小規模企業共済への加入も検討することで、将来の保障を補強できます。
その他にも、銀行口座の開設、印鑑証明書の取得、名刺の作成など、ビジネス活動に必要な準備も行います。また、クレジットカードや保険の見直しも、フリーランスとしての活動に適したものに変更することをお勧めします。
フリーランスでの営業・案件獲得
エージェント活用のメリット
フリーランスエンジニアにとって、エージェントの活用は案件獲得の最も効率的な方法の一つです。
エージェントは豊富な案件情報を持っており、スキルや経験に合った案件を紹介してくれます。また、単価交渉や契約条件の調整も代行してくれるため、営業活動の手間を大幅に軽減できます。
エージェントを活用する際は、複数のエージェントに登録することをお勧めします。
各エージェントが持つ案件や得意分野が異なるため、より多くの選択肢を得ることができます。また、エージェント間での競争により、より良い条件の案件を獲得できる可能性もあります。
ただし、エージェントに依存しすぎると、営業力が身につかないというデメリットもあります。将来的には直接営業も併用することで、より安定した案件獲得が可能になります。
直接営業の方法
直接営業は、エージェントを経由せずにクライアント企業と直接契約を結ぶ方法です。
SES時代のクライアント企業との関係性を活用することで、フリーランスとしての契約に発展させられる可能性があります。また、業界での人脈や知り合いを通じて、新しい案件を獲得することも可能です。
営業活動としては、LinkedInやWantedlyなどのプラットフォームを活用した情報発信も効果的です。
技術的な知見や実績を発信することで、クライアント企業からの問い合わせを受けることができます。また、技術カンファレンスや勉強会への参加も、人脈構築の良い機会になります。
直接営業のメリットは、エージェントのマージンが発生しないため、より高い単価を設定できることです。ただし、営業活動に時間を取られるため、技術的なスキルアップとのバランスを取ることが重要です。
ポートフォリオ・実績の作り方
フリーランスとして成功するためには、魅力的なポートフォリオと実績の提示が重要です。
まず、SES時代に携わったプロジェクトの内容を整理し、技術的な成果や貢献度を具体的に記載しましょう。また、GitHubでのコード公開や、技術ブログでの知見発信も、スキルアピールの有効な手段です。
ポートフォリオには、使用技術、プロジェクト規模、担当範囲、成果物などを詳細に記載します。
また、クライアント企業からの評価や推薦状があれば、信頼性を高めることができます。さらに、資格や技術認定も、スキルレベルの証明として効果的です。
継続的なスキルアップも重要です。新しい技術の習得や、オープンソースプロジェクトへの貢献、技術カンファレンスでの登壇など、積極的な活動が実績として評価されます。
経理・確定申告の実務
フリーランスの経理処理
フリーランスエンジニアの経理処理は、収入と経費を正確に記録することが基本です。
まず、収入については、クライアント企業からの報酬を月別に記録し、源泉徴収の有無も確認します。また、複数のクライアントと契約している場合は、それぞれの収入を分けて管理する必要があります。
経費の記録は、業務に関連する費用を適切に分類して記帳します。
主な経費項目として、パソコンやソフトウェアの購入費、書籍やセミナー参加費、交通費、通信費、事務用品代などがあります。また、自宅で作業している場合は、家賃や光熱費の一部を経費として計上できる可能性があります。
記帳方法としては、手書きの帳簿やExcel、会計ソフトなどがあります。
青色申告の要件を満たすためには、複式簿記による記帳が必要です。税理士に依頼する場合は、月次での資料提供が求められたりします。
確定申告の流れとポイント
確定申告は、毎年2月から3月にかけて行います。
まず、収入と経費の集計を行い、所得を計算します。収入から経費を差し引いた金額が所得となり、これに基づいて所得税を計算します。また、住民税も確定申告の内容に基づいて計算されます。
確定申告書の提出方法は、税務署への持参、郵送、e-Taxによる電子申告があります。
特に、電子申告は青色申告特別控除(65万円控除)の適用条件となっています。
また、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)や小規模企業共済等掛金控除などの税額控除を利用することで、所得税・住民税を抑えることができます。
まとめ
SESとフリーランスの違いについて詳しく解説してきました。どちらの働き方にもメリットとデメリットがあり、自分の価値観やライフスタイルに合わせて選択することが重要です。
重要なポイント
SESの特徴
- 安定した雇用環境と収入が得られる
- 社会保険や税金の手続きが会社で代行してくれる
- 営業活動に時間を取られず、技術に集中できる
- ただし、マージンが発生するため単価は低め
フリーランスの特徴
- 高い単価設定が可能で、収入の最大化が期待できる
- 働き方の自由度が高く、複数クライアントとの契約も可能
- 経費計上による節税効果がある
- ただし、収入の不安定性や自己管理の負担が大きい
転向を検討する際の判断基準
- 安定性を重視するならSES、収入の最大化を目指すならフリーランス
- 十分な資金準備(最低6ヶ月分の生活費)が必要
- 営業力や自己管理能力の習得が不可欠
- 適切な経理処理と確定申告の準備が重要
フリーランスへの転向は、準備期間を十分に設けて計画的に進めることが成功の鍵です。まずは現在のSESでの経験を活かしながら、段階的に準備を進めることをお勧めします。
また、エージェントの活用や直接営業の方法を学び、安定した案件獲得の仕組みを構築することも重要です。
最終的には、自分の価値観やライフスタイル、将来のキャリアプランを総合的に判断して、最適な選択をすることが大切です。どちらの道を選ぶにしても、スキルアップと自己投資を続けることが成功のカギになります